Masaki Sato
STORYクリエイティブ

vol.43 ギリギリなんとかなる

旅行は下調べせず地図も持たない正基さんが、人生設計は目的地へ最短ルートの綱渡りというこれまでとこれからのSTORY。

シドニーで、日本の一級建築士の資格を持つ建築家としてフルタイムで働き、音楽プロデューサーとしての作曲活動も。13歳で、仕事は建築、趣味は音楽、と決めていたという彼のバックグラウンドに迫ります。

「点と点を結ぶ線をひくとき、目的地を見ながら描くのが、その人がフリーハンドで書ける一番ストレートな線なんですよ。スピードも早いし。」

建築パースを学んだときに教わったこの方法は、彼の人生設計にも当てはまると言います。

「最終地点が見えているからそこへ行くのにブレない。決心することは好きなことに関することだけ。興味があるものとないものが極端で、逆に音楽と建築以外、重大な決心はしてないかも。」

仕事が終わってから決まった時間に作曲活動へ。自分で決めた1週間に1-2曲というペースで過去2年間で120曲ほど作ってきたという正基さんは、TVや映画、CMやYouTube等のメディアに音楽素材を販売するプラットフォームへ楽曲を提供しています。

「音楽は、好きな時に好きな曲を好きなようにつくりたいし、作らなきゃいけないと絶対に思いたくない。建築の仕事でのメトロノームみたいな幾度のやりとりもなく誰かを待つこともなく、誰かが自分がつくった曲を買って、メディアや動画などの作品に使ってくれることを想像するのは楽しいです。」

建築は長いと5年に一回しか完成を味わえない「物理な空間」をつくるもので、ひとりではできないもの。音楽は、2-3日で完成する「仮想の空間」をひとりでつくりあげられるもの。どちらも積み上げることには変わらずとも、自分のコントロールが効くものと効かないもののバランスが丁度良くなった今が一番楽しいと嬉しそうです。

そんな彼のカミングアウトが「大学を卒業するまでは中卒でした。家族が転勤族だし単身留学もあって、なかなか学校と噛み合わなくて。」日本で生まれ、9歳からは香港育ち。日本で高校2年生の一年間を過ごした後はオーストラリアへ留学しメルボルンの大学で建築科を卒業。大学在学中に建築で世界をリードする国が日本であることを知り、一級建築士というアイデンティティが欲しい、と大手ハウスメーカーへ就職します。再度渡豪し建築士として働くためには、大学院卒同等の認定試験が必要など、建築の道を目指した正基さんには、国を移動するたびに、各国の言語や教育制度、資格認定の違いからくる壁が立ちはだかりました。

これまでの人生で一番大変だったのは、香港での英語環境に慣れること、一級建築士の試験勉強だったと。

正基さんが通ってきたのは、舗装された道ではなくそびえ立つ崖ルート。

「せめて橋だったらよかったけど、いつもギリギリだった綱渡り。今は笑える話になってよかった」

と笑います。当時は心臓に悪かった、という数々の困難な状況を目の前に、自分が得ると決めたものに対しては押しの強い、ロックなイメージが見え隠れします。

X JAPANにハマり高校生でバンド活動をはじめ、音楽を趣味にすると決めたのも、TVチャンピオンのリフォーム選手権を観て建築の仕事に就くことを決めたのも同時期の13歳。20年後の今、ひとりで好きにやる分には人生に必要なものはすべて手に入れたと言います。

次の目標は、建築の仕事を続け、すでにイメージができている自分のスタジオスペースがある家を設計すること。音楽の方は、つい先日、日本のレーベルからアルバムがリリースされたばかり。「自分の曲がハリウッド映画で使われたらいいな」という夢もきっと叶えることでしょう。正基さんの世界観が詰まった音楽、ぜひ聴いてみてくださいね。


取材協力:佐藤 正基さん(Masaki Sato)
撮影場所:シドニー
日本生まれ香港育ちシドニー在住。一級建築士、音楽プロデューサーMastery Sounds代表。
https://www.tunecore.co.jp/artists/Mastery-Sounds

About author

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オーストラリア・シドニー在住ブランドスタイリスト。グローバルに活躍する起業家のパーソナルブランディングを専門とする。書いた記事がキッカケで人生が飛躍する人たちが続出し、写真と文章で人を輝かせることが天職だと気づく。STORYは、Kimikoがこれまで出会った人生を楽しむ人たちを取材するライフワーク。
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