STORY教育・語学

vol.36 1粒で2度おいしい人生

過去をつまんない人生だったと笑い、生まれつき右腕があがらずできないことがたくさんあったからこそ、今できることがある、と言うちづるさんのこれまでとこれからのSTORY。

「子どもたちと遊んでいると白髪もできないのよー」と特別なお手入れなしにツヤツヤの髪が自慢のちづるさんに3年ぶりの再会ですが、どう見ても若返ってる! 以前より輝きが増したその訳を伺ってみました。

子どもって、遊んでくれる人、構ってくれる人をすぐ見抜きますよね? 落ち着きのない子や極端な人見知りの子など、どんな子でもあら不思議。ちづるさんとは初対面でもすぐに一緒に遊びはじめてしまうのです。ちづるさんの日本語のクラスは、日本での学校教育とは全然違ったアプローチで、みんなで一斉に同じものを作ることもなく、文字を何度も書いて覚えることもしない「楽しいこと」ベース。本気で子どもと一緒になって遊び、作りたいものを作り、なんでも描いていいと好きにする中で、子どもの得意なことや良さを見つけ出していくのです。

型にはまらない変わった子が大好きなちづるさんは、「知識でものを見ないし言わない。その子を見るの」という独自の視点で、子どもの本当の思いを大人へ伝える翻訳家として、育児にハラハラしている保護者たちから絶大な信頼を得ています。印象的だったのは、この言葉。「成長中でどんな大人になるかわからない子どもに、こうしなさいああしなさいとか、何歳なんだからこれができないと、とか私は言いたくないな。まだ素晴らしくなる前の未完成の子どもたちが息苦しくなっちゃうじゃん。大人は見逃しがちだけど、座らない子にはしっかりとした言い分があるの。座らせることにフォーカスするんじゃなくて、受け入れてあげる。そしたら子どもは心を開くのよ」と言うその背景には、あがらない右腕と歩んできた人生があります。

「小学生の頃は、先生に褒められてもどうせほかに褒めることがないからでしょ、とひねくれていた性格ブスだったの。無理やりの左利きだから7歳でもひらがなをきちんと書けなかったし、自分のダメなところを見つけるのがすごく得意だった。人と比べてできないこともあるけど、嫌なことを嫌だと言えなかったし、良い子でいようと大人の顔を伺って人に合わせてきたの。だから、自分が今欲しいものを体全体で表現できるかんしゃく持ちの子などは素晴らしいと思うし可愛くて仕方ないのよー」と笑います。

中華を作ろうと思っても出来上がったらイタリアン、な料理のレシピを見ても作れないという超感覚派で、きちんとしたら個性がなくなるしこれが私、と思えるようになったのはここ数年のことだそう。かつては自分を過小評価させたら天下一品だった! となぜかちょっと自慢げなちづるさん(笑) 「1粒で2度美味しいグリコみたいな人生」で、過去のと現在の人格が真逆なんだとか。自分のルールを遵守するオタク気質な息子さんと、外向的で楽しいことが大好きな失敗もする娘さんに、自分のビフォー・アフターを見るようだと話します。

撮影用にと娘さんが選んだアクセサリーを嬉しそうに見せるお母さんですが、かつてはお子さんへ「なんで宿題しないの、なんであなたはできないの、なんで部屋が汚いの」と小言が多かったとは驚きです。子どもが何も言わなくなり何も問題ないような顔をして隠すように。ある時「子どもを信じようと決めた。心配事を言うと逆効果。学校に遅刻したくらいでは死なない。今は危ないことはしないで、だけ言ってる。親が思っているよりも子どもはしっかりしているし、修正が効くくらいの失敗はやらせてあげた方がいい」とも。

子育てを終えたちづるさんですが、妊娠中に病気で寝たきりになったさいに、2歳の息子さんの世話をしたり食事を用意してくれた周りの女性たちに助けられたという経験が。そこで感じたのは、「子育てって一人でできない。でもやろうとするから大変。」直接恩返しができない亡くなった方もいるので、今育児中の人たちへ循環させたいと自分の子育ての体験談や、生徒さんたちの変化などを保護者へシェアしています。

子育て真っ最中のママさんたちの肩の荷が少しでもおりればといいなと願うちづるさんは、今日もきゃはははと笑いながら子どもたちと遊んでいることでしょう。


取材協力:サマットちづるさん(Chizuru Sammut)
撮影場所:Sydney
3歳から高校3年生、大人に日本語を教える先生でありパステルアートインストラクター。1992年よりシドニー在住。オーストラリア人の夫、成人した息子と娘の4人家族。
https://www.yarukiswitch-oshimasu-chizurukids.com/

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オーストラリア・シドニー在住ブランドスタイリスト。グローバルに活躍する起業家のパーソナルブランディングを専門とする。書いた記事がキッカケで人生が飛躍する人たちが続出し、写真と文章で人を輝かせることが天職だと気づく。STORYは、Kimikoがこれまで出会った人生を楽しむ人たちを取材するライフワーク。
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