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vol.13 やるしかない

Koji Yamaguchi

日本でコンポジターの第一人者となり、熊本でフリーランスという働き方を選んだKojiさん。彼の仕事の活力源になるものとは。

ハリウッド映画やTVCMの映像を合成するVFX(ビジュアル・エフェクツ)コンポジターとして活躍するKojiさん。先日、日本のCMの仕事で9年ぶりにシドニー出張されていた時に再会。安室奈美恵さんが渋谷のスクランブル交差点で踊っているムービーを、交差点の画像を作って合成したのが彼です。

シドニーから日本へ帰国した2009年当時、「コンポジター」そのものが知られていない業界で、シドニー時代に使用していたデジタル合成ソフトを日本で普及させた第一人者として有名です。


Kojiさんは数値で合わせていく実写合成の技術者で、小さな頃から数字が大の得意。実は、最近になって、自分が「ディスレクシア」という読み書き障害だったことをテレビを見て知ったそう。

ハリウッド映画俳優のトム・クルーズや映画監督のスティーヴン・スピルバーグも同じ障害を持つことを告白していますが、Kojiさんの場合、文章を3行ほど読むとめまいがして最初の行に戻ってしまう、PCでチャットはできても文章は書けない、と言います。小学生の時から自覚はあったものの、それが普通だと思っていたので障害とは気づかなかったと。一方3Dに対して鋭い感覚を持ち、ソファサイズは測らなくても感覚でわかるんだとか。

得意なことがいかせる技術者を目指して高校を卒業後工場へ就職。その後転職を重ね、コンピューターグラフィックが登場して興味を持ち、独学で学び始めます。

周りがやってないことをやる、と遅咲きとされる28歳で映像業界に飛び込み、さらに可能性を広げようと学生ビザでシドニーへ来豪したのが33歳。日本でやってきたことが全く役に立たなかった、とシドニーの現場でスキルとコミュニケーション能力を磨きます。

2009年に日本へ帰国後は、「本物」の合成技術に関するセミナーを開いたり、東京で働くも、会社にしばられたくない、と2014年に結婚を機に熊本へ移住。結婚相手の3児の父になることを決めます。

自分のためだけに仕事をするのが寂しいと感じていたKojiさんは、仕事の活力源になる家族を持てたことが嬉しいと語ります。

また、地方でフリーランスという働き方を選んだことで、長続きするためにこれから何ができるんだろう、今のままでは終われない、自分がやりたいことをする、と自身のレベルアップを感じると。

東京には仕事もあり同業者もいますが、熊本では自分の仕事に興味を持つ人も少なく仲間もいない、と後進の育成を始めました。ソフトの操作方法を覚えることではなく、なぜそうしたのかという目的や意識が重要、というシドニー時代に叩き込まれた経験をもとに「10年以内に日本で活躍できるコンポジターを育てるのが目標」だそう。

10代のお子さんを3人抱える父として「やるしかない」と静かに話しながら、仕事の後にビールを楽しむKojiさんは現在51歳。この笑顔とライフスタイルは、シドニー時代と全く変わってませんでした!


取材協力:山口幸治さん
撮影場所:熊本市
熊本を拠点とするVFXコンポジター。株式会社KojiVFX代表取締役。日本各地の企業・大学・専門学校などでセミナー講師も務める。
https://kojivfx.com/

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